格子越しの卒業式観覧 鎌倉市が会場から父親を排除
- 宗像 充

- 14 時間前
- 読了時間: 7分

格子越しに見る卒業式の風景がインターネットのSNSのX(旧ツイッター)に流れた。
3月11日、神奈川県鎌倉市在住の相川健司さん(仮名)は、今年鎌倉市立第二中学校を卒業する娘の卒業式を、体育館の外の渡り廊下から一人見守った。
卒業式から締め出される

その日の朝、相川さんが卒業式に出席するために学校に向かうと、校舎の入り口で教育委員会の女性職員が待ち受けていた。式場に入ることを拒まれ、校舎入口で脇の席に通される。相川さんが、「入れてください」と頼むと、職員は「教育委員会の決定事項です」と説明した。市長も知っているのかと相川さんが聞き返すと、「市長にも報告を入れている」という。
押し問答の末に、渡り廊下からなら卒業式を見てもいいということになった。中を見ると、保護者席には複数の空席があった。
体育館の窓には格子があって、卒業式の事実を相川さんがXに投稿すると、閲覧数は1000万を超えた。
3月19日、今度は小学校を卒業する息子の式に出席するため、相川さんは、鎌倉市立第二小学校に向かった。一週間前に中学校にいた教育委員会の女性職員のほかに、男性職員が2名門前にいた。
中学校のときと違い、会場入りも拒絶され、相川さんは小学校校舎入口玄関までしか入ることもできなかった。
隣にいるのに会えない

相川さんが2人の子どもと会えなくなったのは、2021年9月のことだ。
会社員をしている相川さんは、金曜日のその日もいつも通り出勤した。夕方になり、週末、子どもたちとどこに出かけようかと考えていたら、警察から携帯電話に連絡があった。家族の件で話したいことがあるということなので、妻にラインを送ると、「知らない」と返事が来た。
その後、鎌倉警察署へ出向き、妻へのDVや子ども2人への児童虐待が妻側から申し立てられていて、事情聴取された。妻と子は緊急避難させたいという。帰宅してみると、テーブルに1万円が置かれていて、「当面の生活費です」と書置きがあった。妻子はいなくなっていた。
妻に「土日の子どもの習い事はどうするの?」とラインを送ると、「今あなた(相川さん)から避難しているからキャンセルしてほしい」と返事が来た。週明け、お隣に住む義母の家へ緊急避難をするとラインが来た。
目隠し通学
翌週、子どもたちは義母の家から学校に通学していた。相川さんは通学中の子どもたちと話ができた。子どもたちも現状に戸惑っている様子が会話からわかる。
さらに翌週、通学する子どもたちは、晴れているのに傘を差して、相川さんの自宅の前を通学した。空き巣対策で防犯カメラを設置すると、妻と義母が同伴しているときは傘を差し、子どもだけのときは差していなかった。
それだけでは終わらなかった。
妻と義母が横長のシートを持って、子どもたちを遮蔽して通学させはじめた。その状態が3カ月続き、さすがに相川さんが児童相談所に「児童虐待だ」と電話すると、翌日にはシートを掲げることはなくなった。
実子誘拐?
「最初『連れ去られた』っていう感覚はありませんでした。別居になって、お互い嫌なことはあっただろうとは思います。でも妻側が主張しているような、殴る蹴るや、包丁を振り回したりしたことは一切なかった。子どもとは会えるだろうと思っていたし、隣なんだから子どもも来るだろうと思っていた。でも全然来ない」(相川さん)
1年経っても子どもと会えず、ネットを検索すると、「実子誘拐」や「親子断絶」という言葉が目に留まった。元国会議員が相談を受けつけているのを見つけた。「それは誘拐だから刑事告訴すべき」と言われる。
言われた通りに書類を用意し、2022年の10月に鎌倉署に持参したが、受理されなかった。そこで知己の元国家公安委員長の国会議員に相談に行くと、その場で神奈川県警に電話してくれた。翌日、再び鎌倉署に行くと受理され、話を聞いてくれた。
未成年者略取誘拐罪の刑法224条で告訴状は提出したが、225条の営利目的等略取誘拐罪の捜査に切り替わった。義母からは子どもに会いたければ4万円の生活費を支払うように求められ、支払い続けたが、結局会えないままだったのだ。
告訴は嫌疑不十分で不起訴となっている。連れ去った際に子どもが嫌がっている証拠がないことが、横浜地方検察庁の説明だった。容疑者が他人だったら、子どもが嫌がっているかどうかは問われないと思う。しかし、親による子の誘拐については、現在のところ起訴された事例がない。
昨年から妻との間では、離婚裁判が継続している。しかし相川さんは、以前も今も共同親権者のままだ。なのに中学校を卒業した娘の進学先もわからない。
学校行事出席は担当者次第
今年の卒業式では、相川さんは排除されたが、3年前の娘の小学校の卒業式では、保護者席の最前列で娘の姿を見守った。事情を聞いてくれた教頭が配慮してくれたのだ。都合がつけば別の学校行事にも出席した。
学校どうしで引継ぎをしてくれて、娘が中学校に入学後も、同じように体育祭に出席した。
それが、娘が2年生になって教頭が替わると対応が変わった。子どもが嫌がっているから控えるように言われ、公開の学校行事でも遠くから見守るようにした。
この3月の卒業式では、やはり子どもが嫌がっているから控えるように、事前に学校側から言われている。市役所に問い合わせると参加に問題ないという見解だったのが、冒頭のように、入口では体育館の外から見るように言われた。
また小学校を卒業する息子のほうも、それまでは学校行事に出席していたのが、やはり学校から拒絶されたため、まとめて教育委員会に文書での見解を求めた。
隣の家に緊急避難?
この4月から共同親権が婚姻外でも明記された改正民法が施行される。
役所の各部局とのやり取りの際、「父母は、親権や婚姻関係の有無にかかわらず、こどもの利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければなりません」と紹介する新民法の条文が鎌倉市のホームページにあることも、相川さんは言及していた。「父母の一方が、特段の理由なく他方に無断でこどもを転居させること」も、その義務違反の事例に挙げられている。
「緊急避難なのに隣の家にいる。子どもに玄関先で挨拶すると警察を呼ばれる。110番の理由は怖い人がいるということらしい。警察は、だったら引っ越すようにと言ったそうです。でもお金がないから引っ越せないという。そんなのってありますか」(相川さん)
子どもの個人情報を親ではなく学校が判断?

鎌倉市教育委員会に、相川さんが式への出席を拒否された件について聞くと、「2小の案件ですね」と教育指導課の担当者が電話口に出た。
「個別的な案件は詳細を言えない」と断りつつも、相川さんの式の出席を断った理由を聞くと、「児童の気持ちを尊重しながら対応している」という。
「何か法的根拠はあるんでしょうか」
「具体的には言えないですが、保護者のガイドラインにも沿っているし、市の方針には背いていません」
「公務員ですから、具体的な条文を言う必要はありませんか」
「パッと出ません」
「子どもの気持ちを尊重するのは親のほうで、学校側が言うことじゃないと思うんですよね。思春期に子どもが親に学校に来てほしくないと言うのはよくありますが、だからって学校が親に来るなとは言わないと思うんです。相川さんに何か特別な理由でもありましたか?」
「お答えしかねます」
「息子さんの中学校の入学式でも同じ対応でしょうか」
「お答えしかねる……」
式への入場拒否に対し、相川さんが教育委員会に見解を問うと、日付のない回答文書が返ってきた。学校側は「子どもの意思確認」を拒絶の理由としているが、直接の聞き取りではなく、「お子様ご本人及び母親から要望を受けた」とあった。しかし、息子が拒否していることについては、これまで理由に聞いたことがなく、回答でも特定されていない。
理解できないのは「個別の場面については個人情報にも当た」るから回答を拒否しているという点だ。学校は子どもの親ではない。入場自体拒否された2小の卒業式のときには、教育委員会の職員が市長にも報告しているというので、その後市役所の秘書課に問い合わせた。すると、方針は伝えていたものの、入場拒否などの個別の対応については聞いていないと、文書で回答があった。
「混乱を生じさせましたことを深くお詫び申し上げます」と末尾にあった。



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